堺市の変人

堺市から情報を発信する変人親父です

台湾の動物愛護事情

ペットの番組は、面白可笑しく作られたものや、お涙頂戴といったものが多く、私は余り好きではありません。

しかし、2月23日に放送されたNHKの「家族になろうよ」は、さすがNHKと思わせる内容でした。

特に「世界の動物保護最前線」は、動物愛護の真髄を垣間見た思いがしました。

 

2017年2月、台湾では捨て犬や捨て猫を収容する各地の公立施設で行われてきた殺処分を全面的に廃止しました。

アジアではインドに次ぐ2番目の導入で世界的にも例が少ないようです。

 

その背景には動物愛護に向けた多くの人の行動がありました。

ある人はペットに「毛子供(ケコドモ)」という呼び方をすることで、ペットは毛の生えた家族であるという認識を人々に行きわたらせる事に成功し、ある人は「十二夜」という収容施設の犬達を描いたドキュメンタリー映画を作って国の殺処分の現状を訴えました。

 

この「十二夜」という映画、NHKの「家族になろうよ」の中でも少しだけ放映されていたのですが、それを見た家内は瞼を腫れ上がらせていました。

そのくらい悲惨な動物保護施設の現状を真正面から捉えています。

 

映画は台湾で大きな話題となり、およそ23万人が劇場へ足を運んだそうです。

You Tubeで公開されて3日間で2万近いアクセス数もあったらしいです。

 

そういった様々な動きから各自治体が、「殺処分数が多いと聞こえが悪い」という事になり、殺処分の数を減らすようになりました。

 

しかし、収容施設が少ないのに殺処分を少なくすると、限られた施設に犬・猫をぎゅうぎゅう詰めに収容するしかなくなります。

そのため、施設では病気や、狭い場所に押し込められストレスから犬同士の喧嘩による怪我などで多くの犬が傷ついたり死んだりしたようです。

 

施設で働いていた女性獣医師の一人は、その現状を目の当たりにして、抗議のために犬の殺処分に使われている薬を自分に注射して自殺しました。

 

彼女は、「狭い場所にぎゅうぎゅう詰めにされ共食いまで」といった現状を見て、少しの期間生きながらえるよりは、最後の時くらい心おだやかに過ごさせてあげたいという思いが強かったようです。

過渡期に起こる現象とは言え、現場に居る者にとっては耐えられない現実だったのでしょう。

 

それでも台湾の殺処分は、日本に比べて数段優しいと私は思います。

台湾では犬が保護されてから十二夜後に処分されます。

 

片や日本では短い時は3日で殺処分、飼い主から持ち込まれた犬などは次の日に処分されることも珍しくありません。

しかも、薬で安楽死させる台湾と違って、日本では「ドリームボックス」という名前の小さな個室に二酸化炭素ガスを注入し死に至らせた後で焼却処分を行います。

安楽死とは名ばかりの窒息死であり、犬猫はもだえ苦しみながら死に至ります。

 

今、広島では殺処分「ゼロ」の偉業を達成しました。

しかし、ボランティア団体に引き出された犬達が台湾の収容所の犬達のように、保護施設でぎゅうぎゅう詰めの部屋に入れられ、ストレスにさらされ、食べ物も少なく生まれた仔犬を食べたり、犬同士でリンチの末に仲間を殺したりということが起きていると聞きます。

明らかにキャパオーバー、ボランティア団体に頼る殺処分「ゼロ」では無理があって当然です。

 

やはり本当に殺処分「ゼロ」を目指そうと思ったら、蛇口を閉めるしか方法はありません。

ドイツのようにペットショップによる生体販売を全面廃止し、犬や猫を飼いたい時は

動物保護施設か専門のブリーダーからしか譲り受けられないようにし、犬を飼っている人からは犬税を徴収した上で保護施設の運営費用に回すというドイツのような取り組みが必要なようです。

そういった使い道なら多くの人は、喜んで犬税を支払います。

「税金を支払ってでも犬を飼いたい」という人が増えれば、確実にペットに対する認識が深まります。

 

ペット後進国の日本では、理想通りに事は進まないのは分かっています。

しかし、NHKが保護犬・猫の里親探しの番組を始めたことは少しの前進です。

先はまだまだ遠いですが、いつか日本もドイツやイギリスのように私達の友人であるペットにも優しい国になると信じています。

 

ペットの「命」を大切にする事は、人の「命」を大切にする心に繋がっているような気がします。