堺市の変人

堺市から情報を発信する変人親父です

捨てられた飼主

 今、世間は空前の猫ブームです。そして我が家にも猫が一匹!

 実は我が家の凡猫は二代目です。

 かれこれ20年くらい前に我が家には一匹、「ハナ」という名の茶寅の猫が居りました。

 名前の由来は「花」のハナではなく「鼻」のハナです。私の実家からの帰り道、雨の中での信号待ちで「フッ」と道端の水路に目を遣るとちびっこ猫が「ミャー ミャ―」と親から捨てられたのか一匹で鳴いていました。猫風邪のために目も半分以上ふさがれ、鼻からは鼻水をだらだら流している不細工な子猫でした。

 青信号で家内は車を発進させたのですが、私が「雨、本降りになりそうやな」とか「死んでしまうやろ、あの子猫」とか話していると、やはりUターン、子猫を捕まえ帰りの道で見つけた動物病院に連れて行き猫風邪の治療薬を貰っての帰宅となりました。

家族が一人(一匹)増えた瞬間でした。

 ペットを飼うのは初めてでしたので、箱の中にタオルを敷いて寝床を作ったりと大変でしたが、落ち着いてニャンコの身体を看ると「こんな小さい身体にどれだけおるねんっ!」というくらい蚤が飛び跳ねていました。

 ペット禁止のハイツでしたので、一時だけ!里親探しくらいなんとかなると思っていたのですが、今のようにネットが発達していない時代でしたので、知人に声をかけるも見つからず結局我が家でそのまま飼うことに・・・でも猫風邪が治ったハナはとっても男前の体格の良い立派な猫になりました。

 その頃、まだ猫は室内飼いが絶対という時代ではなく、ハナを見てもらっていた獣医さんも「外に行ったほうが猫のストレスが溜まらないなら、たとえ寿命が短くなったとしてもそのほうが幸せだと思います」なんて事を言われました。(今、こんな事を言う獣医さんは居ないと思いますが)

 そんなこんなでハナは外にも平気で行く猫、共働きの私達が仕事に行っている間は外に行く、そして一晩帰ってこない事も多々ありました。

 もちろん喧嘩して怪我をして帰ってきたこともあります。(去勢はしてありましたが)でも、私達が仕事から帰ってきたらどこからか出て来て「にゃぁ~ん」と必ず出迎えてくれていました。

 そんなハナがある日私達を出迎えてくれなかったのです。(飼い始めてから3~4年くらい経った頃だったと思います)そしてその日以来帰って来なくなりました。

 「事故にでも遭ったのか?」「猫は死期を察したら姿を消すと言うから・・・」と心配して何日も近所を探し回りました。

 でも結局見つからずじまいでその内、諦めてしまいました。家内はハナが死んだと思って泣いていました。

 しかし、ハナが居なくなってから一年くらい過ぎた時、近所に買い物に出かけた私達は家から50メートルくらい離れた場所にある一軒の家の前を通りかかった時の事です。

 その家のガレージの屋根の上に一匹の猫が丸くなって幸せそうな顔でまどろんでいるのが見えました。その猫の模様がハナにそっくり!我が家に居た頃のハナはスリムで(標準体重を保つように餌の調整をしていました)野性的なカッコイイ猫でしたが、目の前で眠りこけている猫はまるまると太った、野生のかけらもないような怠惰な猫です。

 しかし、そのまんまる猫の耳が欠けているではありませんか!

 ハナは以前喧嘩した時に耳の先を噛みちぎられていたのです。その欠け方を見て私と家内は声をそろえて「ハナや!」

 ハナの新しいお家は、他にも何匹か猫を飼っておられるようで、出入りしている内に居ついてしまったようです。

 そちらのほうが仲間も居るし居心地が良かったのでしょう。体重管理も無いようですから、食べ放題といった風体でした。(要は我が家より居心地が良かった事は確かなようです。)

 幸せそうに居眠りをし、丸々と太ったハナの顔を見て「思いだして帰ってきたらアカンから声かけたらアカンで」との家内の声に、そっとその場を立ち去った私達です。

 猫は犬と違って人に対して忠誠心はありません!心のおもむくままに自分の居心地のいい場所で生きて行く事を選んだのでしょう。しかし目と鼻の先に住んでいたとは!?

 知らないほうが良かった事ってあるものですね!

 猫に捨てられた私達でした!