堺市の変人

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映画「ウィル・ペニー」

チャールトン・ヘストンと言えば、まず「十戒」「ベン・ハ―」が頭に浮かんで来ます。(後年はアルツハイマーに悩みながらも、大スターとしては珍しく離婚歴が無く64年間連れ添った婦人に看取られ84歳で亡くなっています。)

 

ヘストンは、全米ライフル協会の会長だった事から、保守派の代表とみなされていますが、公民権法が制定される1964年前後には、人種差別反対を唱え、公民権運動でも活躍し、キング牧師ハリー・ベラフォンテマーロン・ブランドサミー・デイビス・ジュニアらと共に有名なワシントン大行進に参加しています。ちょっと意外でした。

 

「ベン・ハ―」や「十戒」では、歴史劇を逞しく演じる彼の姿が印象的でした。

猿の惑星」のテイラーを演じるヘストンも強い男を演じたという印象です。

 

しかし、西部劇「ウィル・ペニー」は、違います。

初老のカウボーイの哀愁といったものが、いかんなく表現されています。

普通の西部劇では、主人公がボコボコにされるような場面は余り出て来ませんが、この映画は、またか!といった具合にヘストン演じるペニーがボコボコに・・・

 

ラストシーンも印象的です。

普通なら、好きな女性との生活を期待させながら映画が終わりますが、女性の思いを振り切り去ってゆくというラストも普通の西部劇と一線を画しています。

「私は、もう年寄りだ・・・」といった具合にです。

私は、絶対にハッピーエンドのストーリーと思い込んでいましたが、男女の出会いと別れ、この「別れ」が作品に深みを与えているようです。

 

共演のドナルド・プレザンス、映画やテレビで活躍した名優です。

大脱走」「007は二度死ぬ」「ミクロの決死圏」・・・

主役を呑んでしまうような渋い深みのある演技が印象的ですが、この映画では、余りにも悪役になり切っていましたので、初めはプレザンスと気付きませんでした。

 

さすがは、名優!存在感は並大抵ではありません。

彼の出演でこの映画がワンランクアップという趣があります。

そんなに強くない初老のヘストン、これでもか!という程悪役を演じ切ったプレザンス、そして、派手さを抑えた演出と役者の個性を巧みに組み合わせ、映像化したトム・グライス監督の手腕に脱帽といったところです。

 

子供が重要な役所となっている事から「シェーン」を思い起こしますが、比較的単純なストーリーの西部劇「シェーン」と比べても、決して負けていないような気がします。(勿論「シェーン」も大好きな映画です)

 

主人公が強くカッコ良い西部劇と違い、初老のピークを過ぎたカウボーイという、より身近な人間を題材にしていますので、観終わった後に自然と心地よい余韻が出てきます。主人公をより身近に感じてしまいます。

ヘストン映画の中でも、「隠れた名作」では・・・

私にとっては、ヘストン映画の「ベスト1」です。

 

この映画以降に製作された「明日に向かって撃て」や「小さな巨人」と違い、勧善徴悪がストーリーとなっていますので、ある意味、古き良き時代の最後の西部劇といった感があります。