堺市の変人

堺市から情報を発信する変人親父です

エマニュエル・トッド

今読んでいる「世界の未来」(朝日新書)、副題の「ギャンブル化する民主主義、帝国化する資本主義」に惹かれ買いました。

 

世界最高の知性と銘打って「エマニュエル・トッド(フランス)「ピエール・ロザンヴァロン(フランス)」「ヴォルフガング・シュトレーク(ドイツ)」「ジェームズ・ホリフィールド(アメリカ)」の四人のインタビューや講演が紹介されています。

 

内容は、「グローバル化への反動として、多くの問題が噴出する私達の社会」「先進国の中でこそポピュリズムが台頭するのはなぜか」「行き詰まる民主主義の再活性化に何が必要か」「崩壊が進む資本主義に取って代わるものはありえるのか」「排他主義の高まりとどう向き合えばよいのか」と正に私達の社会が抱える問題に焦点が当てられています。

 

ようやく50ページ余りを読み終え「エマニュエル・トッド」の項を読みおえました。(自慢では無いですが読むのは遅いです)

エマニュエル・トッド」は、シラクサルコジ・オランドの歴代フランス大統領を厳しく批判して来ました。マクロン現大統領にも、ただの優等生、体制順応で点取り虫と評していますので、フランスではアウトロー、反逆者といったイメージのようです。

当然「ルモンド」や「フィガロ」といった大新聞かのインタビューを受ける事は無いようですが、日本では世界の「知性」として脚光を浴びています。

 

日本のマスコミは、フランスと違って礼儀正しく敬意を払ってくれますので、日本の記者と話すときは、穏やかで落ち着いた態度で真面目に話が出来ます。という彼の言葉に私は、アウトロー的なものを感じる事はありません。

 

記述の中に「民主主義の土台を崩す高等教育」という項がありました。

識字率の広がりや学問の必要性は、彼も認めていますが、フランスでは、権力の座に就く人が学んでいる超エリート校グランド・ゼコールを出た人が知的だという事は無い。と明言しています。

むしろ、企業や組織の中間管理職や現場監督、病院の看護師といった人たちの方が、マクロン大統領よりもっと知的だと言い放っています。

 

高等教育の最高峰、国の指導者を生み出すようなエリート校が排出する人物が、変革していく時代に合わせて社会を変えて行く事より、変化を嫌い体制を守り順応していく事に危機感を感じているようです。

現在の高等教育を「民主主義の土台を崩す」とまで言い放っているのですから、危機感は相当なものです。

 

翻って、日本の現状を見てみてもフランスと大差は無いような気がしてなりません。

ひょっとしてフランスや日本だけでなく世界的な現象なのかも知れません。

 

日々、色んなニュースが飛び込んで来ますが、政治家や最高の教育を受けた官僚の言動に肌寒さを覚える事もあります。

企業人は会社を大きくし利益を追い求める事は当然の事ですが、少なくとも政治家や行政は弱い者のフォローが使命では!

 

実際、時代が経てば経つほど、社会が不安定になり、地域の争いが増え、戦争の危険性も増大しているようです。私達が住む環境も回復が難しい程に悪化しているようです。

「進歩」という言葉が空虚に聞こえてきます。

 

高等教育が、エスタブリッシュメント(既存体制の擁護者)や富裕階層の養成機関になってしまったら民主主義は崩壊してしまいます。

「世界の知性」の目はさすがだと感心させられました。