映画「弾丸を噛め」
「弾丸を噛め」とは、いかにもハードボイルドを連想させるタイトルです。
「ゴルゴ13」のような冷酷非情、タフな男の映画を期待してしまいます。
ギャング映画の「ゴッドファーザー」や西部劇では「夕日のガンマン」なんかで、容赦なく弾丸が飛び交うような場面がピッタリです。
でも、ジーン・ハックマン、ジェームズ・コバーン出演の「弾丸を噛め」は、そんな私の期待を見事に裏切ってくれました。
監督・脚本・製作がリチャード・ブルックス、「暴力教室」「カラマゾフの兄弟」「熱いトタン屋根の猫」「エルマー・ガントリー/魅せられた男」・・・名作揃いです。
ジーン・ハックマン、ジェームズ・コバーン、ベン・ジョンソンは、アカデミー賞俳優です。他にもキャンディス・バーゲン、イアン・バネンは、アカデミー賞にノミネートされています。
なんとも豪華な俳優陣ですが、この西部劇は一般の本格西部劇とはタッチが変わっています。
西部の男の強さというより「我慢強さ」を前面に出しているように感じます。
馬に乗っての西部横断レースを競うというストーリーですが、この「弾丸を噛め」というタイトルは絶妙です。
麻酔薬の無かった昔の西部では、弾丸を噛んで痛みに耐えたようです。その事から「弾丸を噛め」という言葉は、「我慢しろ」という意味に使われていたようですが、西部開拓の歴史は、格好良さよりも我慢と忍耐によって創られたといったメッセージのようです。
映画では、歯医者の居ない辺境の地で、メキシコ人の歯の治療に弾の薬きょうが使われていました。
歯に入れられた義歯代わりの「薬きょう」が、バディスト―リーの象徴として男の友情を演出しています。ウィットに富んだ演出に感心させられました。
当初、クレイトン役には、チャールズ・ブロンソンが予定されていたようですが、断られたため、ジーン・ハックマンが主演となったようです。
結果オーライ!汗が乾き白い塩を吹いている馬と一体となったハックマンの「これぞ我慢強い西部の男」といった演技は、さすがアカデミー賞俳優です。
本格西部劇に比べ、コミカルな描写が多く「軽さ」を感じてしまいますが、西部を生き抜いた人の「真の生きざま!」、我慢と忍耐が西部開拓の源泉だったと感じさせてくれました。
人への「愛」、馬への「愛」を強く感じさせる作品でした。