「朝日のあたる家」
作者不詳の名曲、「朝日のあたる家」は、ブルースを思わせる憂いに満ちた旋律で独特の雰囲気を持った曲です。
ボブ・デュランは、この曲を美しさより情感を前に出し切々と歌い上げています。
歌うというより物語を語っているようなデュランの歌声は、聞いていて胸が締め付けられる思いがします。
これにメリハリを付けたのが、アニマルズの「朝日があたる家」です。
当然、此方の方が効き易くヒットした理由が分かるような気がします。
アニマルズの歌うこの曲は、ビルボード(米音楽誌)のヒットチャートで3週連続1位、イギリス、スウェーデン、カナダのチャートでも1位を記録しています。1999年にはグラミーの殿堂入りも果たしています。
ロックンロールの歴史500曲にも選出されていますので音楽史を語る上で欠かせない1曲なのは確かです。
90年近くもの間、歌い継がれて来た名曲ですが歌詞は流行りの「好いた惚れた」とは全く違います。
この曲の歌詞は時代と共にいくつかのバージョンがあります。当初は娼婦に身を落とした女性の懺悔の歌でしたが、アニマルズは若者の破滅を題材にと大きく変わっています。
1世紀近くも歌われていますので時代に合わせ歌詞が変わっていくのも仕方が無いのかも知れませんが、とにかく流行りの歌とは一線を画す深み(悲しさ)を持っています。
私が初めてこの歌を聞いたのは、カレッジフォークで有名なブラザーズフォアバージョンです。比較的テンポ良くスマートに聞こえるブラザーズフォアの歌声に痺れました。
しかし、この歌の「心」を感じるのは、後に聞いたボブ・デュランやアニマルズです。
聞いていると心が沈んで締め付けられるような思いになる歌というのも珍しいですが、現実離れしていない所が、この歌の凄さのような気がします。
「ザ・ベンチャーズ」「二―ナ・シモン」、日本では「ちあきなおみ」と歌唱力のある一流所がカヴァーしているというのも名曲の証です。
人生の「闇」と真正面から向き合った「朝日のあたる家」は、歌い切るのにそれなりの力量と経験が求められる歌のようですが、絶対に懐メロにはならない名曲です。