トスカニーニのべトーベン「3番」
今、ベートーベン交響曲第3番(英雄)を聞いています。指揮はトスカニーニ、古い録音ですが私は好きです。
フルトベングラ―の神懸り的な気迫とは打って変わって、楽譜に忠実な演奏は必要以上の誇張も無く気持ち良く耳に入って来ます。
楽譜に忠実といっても、力強さは並大抵で無く、演奏に確固たる「志」を感じてしまいます。
トスカニーニ自身この曲が好きなようで、数ある交響曲の中で最も多く演奏しているようです。(1926年の渡米から1954年の引退までの28年間で52回)
彼の演奏でこの「英雄」を上回るのは、ドビュッシ―の交響詩「海」とワ―グナ―の「ニュルンベルクのマイスタージンガ―前奏曲のみと言われていますので、いかに「英雄」の演奏回数が多かったかが窺われます。
そんなトスカニーニが引退する前年に、NBC交響楽団を指揮した録音が名盤として残っているのが、この録音です。
今では、録音も新しいカラヤン(ベルリンフィル)やバーンスタイン(ウィーンフィル)の方が、音も良く人気があるようですが、66年前に録音されたトスカニーニの演奏は、カビ臭いかも知れませんが現代の演奏に無い重厚な深みを感じてしまいます。
引退の前年の演奏ですから、ある意味トスカニーニのベートーベン3番の集大成ともいえます。
聞き始めると最後まで何と時間が短く感じられる事か!
徹底的に妥協の無いリハーサルで鍛え上げられたNBC交響楽団の演奏は、ギュッと締まっていて一音も無駄な音が無く聞き終っても爽快・・・
ビクターの「XRCD」盤は、53年の録音を満足のいくレベルで再生しているようです。
この曲を演奏しているNBC交響楽団は、一度引退したトスカニーニのために潤沢な資金で編成されたアメリカの交響楽団です。使っている楽器も悪い訳がありません。
録音技術(機器)は、今とは大きく違いますので完全に当時の音が保存されているとは言い難いですが、それでも聞こえてくる音楽は超一流です。
当時の音が聞けたら・・・考えるだけでも気持ちが高ぶります。
私は、現代の新しい演奏(録音)よりも、音も良いとはいえない昔の演奏に惹かれる事が多いですが、ムラヴィンスキ―(レニングラードフィル)の68年盤と併せトスカニーニのこの演奏も捨てられません。
次は、フルトベングラ―(ウィーンフィル)の52年盤でも探そうかな?
これも古い録音です。