交響詩「ローマ三部作」
レスピーギ作曲の「ローマの松」、「ローマの噴水」、「ローマの祭り」の三部作は、文字通りローマの風情を描いたものですが100年程前に作曲された交響詩です。
まず、驚くのは今聴いても全く古さを感じさせません!?
演奏も1950年頃のトスカニーニ指揮、演奏はNBC交響楽団です。名指揮者の為に編成されたという説もある今は亡きNBC交響楽団は、トスカニーニとのコンビで多くの録音を残していますが、この「ローマ三部作」は指揮者と楽団の良さが見事に結実した演奏となっています。
多分、この曲の最高の演奏といっても過言では無いようです。
普通の指揮者や楽団では、金管楽器の部分などは喧しいだけで安っぽくなってしまいます。
20世紀を代表する名指揮者と、その指揮者の一挙手一投足に即座に反応するよう鍛えられたNBC交響楽団にしか成し得ない貴重な演奏です。
数々の歴史に残る演奏を残したトスカニーニとNBC響ですが、フルトベングラ―とベルリンフィルのように楽団が指揮者に対し全幅の信頼を置いているのとは違い、完璧を求めるトスカニーニのリハーサルは厳しく、罵倒や怒号の連続で、ある時には団員の指を指揮棒で突き刺し問題になった事も有ったようです。
今なら完全にパワハラです。(当時も裁判沙汰になったようですが、当時のトスカニーニのアメリカでの人気は絶大だったようです。)
しかし、そこから生まれた音は、正に宝石のようにキラキラとローマも情景を映し出しています。
客演指揮者ではこうはいきません。常任指揮者が長きに渡りリハーサルを積み重ねた故に出来る演奏ともいえます。
この時期に録音したベートーベンの「交響曲全集」、私が持っているのは音は悪いですが、それでも聴けば直ぐに「志」があるなと感じてしまいます。
最近は、有名な指揮者や楽団の演奏を聴いても「上手いな」としか思えない事があります。
「上手く」「綺麗な」だけの演奏では無く、音の向こうに「深み」や「志」を感じるような演奏が無くなってきたようです。
指揮の技術や楽器の性能、録音技術も格段に進歩しているのに不思議なものです。
時には賑やかな「ローマ三部作」の演奏ですが、無駄な音が一切有りません。
研ぎ澄まされた音が飛んで来ます。
理屈抜きで楽しくなってしまう演奏です。