堺市の変人

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アンドリュー・ワイエス

米国の「アンドリュー・ワイエス」は、50年近く前の記憶が残っている不思議な画家です。

20才そこそこの時に窓に掛かったレースのカーテンが風に吹かれている絵が、当時白黒で新聞にのっていました。

私は思わず「風を捉えたこの写真は凄いな!」と感想を述べた所、新聞を見せてくれた友人が「これは写真では無く絵画だよ」と教えてくれて二度驚いた事が思い出されます。

 

それ以来、この画家の名前が高齢者となった私の頭に今でも記憶に刻み込まれました。

最近、日曜美術館で生誕100年を期に「ワイエスの描きたかったアメリカ」という番組が放送されました。

そこで紹介されたワイエスは、若い頃に感じた「風を感じる写実」画家とは全く違ったものでした。

 

彼の代表作「クリスティーナの世界」は、綺麗な草原の中から少女が我が家を眺めているといった描写ですが、実は、足の不自由な少女が手だけで家に帰ろうとしている姿でした。

その証左に彼女の手は、少女の可弱い細い指では無くしっかりと大地を掴めるが如く節くれだっています。

美しさより、赤裸々な人間の裸の営みが恐ろしい程ストレートに表現されています。

 

はっきり言って、私が若い頃に受けた印象は、木端微塵に打ち砕かれたようで恥ずかしい限りです。

ワイエスは、白人画家として初めて黒人を題材にした事でも並の風景画家や肖像画家とは一線を画しているようです。

 

彼は「アメリカ人にアメリカとは何かを示したかった」と語っていますが、移民の国アメリカをそのまま題材にしている「スノ―ヒル」は、白人や黒人が輪になって踊っています。

正に「同じ移民じゃないか!」とワイエスが語りかけているようです。

 

「踏みつけられた草」なんか、履き古した長靴で草原を歩く人の足元しか描かれていません。

この一歩一歩の力強い歩みがアメリカを造ったと言わんばかりです。

 

アメリカで今、ワイエスが改めて注目されているのが分かるような気がします。

人が生活する中での苦悩を誇張する事無くそのまま描き続けた画家は、アメリカの真の原動力を見詰め続けた数少ない画家のような気がします。

少なくとも、ワイエスは白人も黒人も同じ目線で見ていた数少ない画家だったようです。