堺市の変人

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名著「宮本武蔵」

名著「宮本武蔵」(吉川英治著)は、青春真っ盛りと言った頃に夢中になって読んだ本の一冊です。

徳川家康」(山岡荘八著)、「竜馬が行く」(司馬遼太郎著)、「天と地と」(海音寺潮五郎著)等と並び私には思い出深い書籍となっています。

 

高校時代は、テスト前に一夜漬けというのが習慣となっていましたが、「疲れたからちょっと本でも」と思い時代小説を手に取ったら最後、朝までテスト勉強そっちのけで読んでしまった事も何回かありました。

お陰で、テストの成績は惨憺たるものでした。

 

竜馬がゆく」は、さすが人気小説だけあって、展開が早く読者を飽きさせません。

徳川家康」は、なんと全26巻!時代小説(大衆小説)の大作中の大作と言えます。

天と地と」は、海音寺が描く「求道的」な上杉謙信の人物像に引き込まれます。

何故か、剣客ブームを巻き起こした、柴錬(柴田錬三郎)は読んでいません。

 

しかし、私にとっての時代小説「NO1」は、「宮本武蔵」です。

他の作品と違い、「宮本武蔵」は、沢庵禅師が大きな存在感を持っていて他よりも宗教色(求道的)が濃い物となっています。

私なんかは、「お通」のくだりは早く読み飛ばしていました。

 

故に、ホームラン王の王貞治極真空手大山倍達、水泳の古橋廣之進、将棋の升田幸三・・・多くの著名人に影響を与えたと言われています。

 

意外な事に、この小説の誕生には、菊池寛直木三十五が大きく関わっているようです。

1932年に直木が「武蔵=非名人」を唱えると、菊池が「武蔵=名人」説で反論したという事ですが、この頃、直木が吉川英治に「お前はどちらだ?」の問いに「武蔵=名人」(菊池節)を支持した所、直木が「それでは、吉川が武蔵を名人とする理由を発表せよ」と迫ったといわれています。

 

日本文壇の巨星とも言われる3人が、他愛も無い話をしているのが、かえって人間臭くて面白く感じられますが、「宮本武蔵」は、この一件のお陰で誕生したようです?

 

今、定着している「武蔵像」は、吉川が作り上げたといっても過言でない位、日本人に大きな影響を与えた小説ですが、単なる歴史物では無く、「求道」といった日本人好みの題材のため、80年以上を経た今でも「宮本武蔵」は、根強い人気を保っています。